アフリカのスタートアップとカルチャーを発信

16 Jul 2018
Startup

ネット上の言語が、アフリカの(そして君の)可能性を制約する

“The limits of my language online mean the limits of my world” −Ludwig Wittgenstein

 

英語でググれる人はそれだけでビジネス、学業において大きなアドバンテージを持っている。

なぜか。

 

第一の理由は、コンテンツの絶対量である。

世界のウェブサイトの51.4パーセントは、英語コンテンツを保有している。

言うまでもなく他の言語を圧倒しており、英語に続くロシア語を含むウェブサイトは、たった6.1%である。

世界のネット人口を見ると、「最も多くの人々に話される言語」である中国語の人口を超えて、英語人口が一位に君臨している。

同じ検索能力を持ち合わせていると考えれば、日本語と英語、どちらを使えば情報へのアクセスが容易か自明である。

 

 

英語を使えるアドバンテージは、絶対量だけでなく、広範囲に普及している点にもある。

以下は、Wikipediaのエントリーがどの言語で最も書かれているかを国別に記したマップだ(クリックで拡大)。

Source: dominant Wikipedia language by country, Mark Graham

中国語も人口の絶対量で言えば英語に迫るが、その分布は国内にとどまっていることが分かる。

一方で、英語は数多くの国と地域で主要ネット言語として使われている。英語を駆使出来れば、それだけ世界中のローカルな情報にアクセス出来ると考えられるだろう。

 

当然ながら支配的な言語に検索エンジンの開発リソースが集中投下されるため、英語検索のアウトプットの質は極めて高い。

また、これだけインプットが多い分、検索エンジンの機械的な情報整理レベルは他の言語を上回る速度で改善する。

ちょっとググり方に難があっても、拾ってくれる、というわけだ。

 

上記を踏まえた上で、インターネット上におけるアフリカの言語を見てみよう。

地理学者のマーク・グレアム教授によると、Wikipediaには、2012年時点でアフリカの言語におけるコンテンツがほとんど存在していない。

Google Translateは現在13のアフリカ言語に対応しているが、北アフリカと南アフリカを除けば、その対応率は低い。

 

Source: Geo-referencing of Ethnic Groups

 

組織の資源として、ヒトモノカネに情報が加わる昨今、これでは最初からビハインドが決まっていると言っても過言ではない。

頼みの綱の機械翻訳は、日本語/英語間でもまだまだ不完全である。2,100もの言語が存在し、音が重要な意味をもつ口語中心の「無文字社会」が広く存在するアフリカの言語を機械翻訳する事は、決して容易ではないだろう。

 

しかし、彼らが世界中の情報にアクセス出来るようになる世界を想像してみてほしい。

もはや、テキストでググるなんてことはしない(出来ない)だろう。固定電話をすっ飛ばして携帯電話を手にし、道路をすっ飛ばしてドローンを普及させようとするように、テキスト検索という機械的な作業をすっ飛ばして、パーソナルデジタルアシスタントとの自然な会話を通じて情報を手にする時代へとリープフロッグする姿は、想像に難くない。

SiriやGoogle Nowに「息子がずっとお腹を下してる」と口頭で伝えれば、インプットは英語に変換され、位置情報などからコレラ感染の疑い、応急処置方法に辿り着き、話者の第一言語で回答が示される。

起業したいと伝えれば、同じ要領で利用可能なローンが紹介され、ソーシャルメディアを含む個人のデジタル情報から信用スコアを算出し、最も好条件で借りられる金融サービスにアクセス出来る。

 

ほんの少し想像しただけでも、言語の不自由から解放されることのインパクトを窺い知れるのではないか。

 

 

(参考)

Estimated percentages of the top 10 million websites using various content languages, W3Techs

INTERNET WORLD USERS BY LANGUAGE, Internet World Stats